設計監理方式による大規模修繕工事 5/6
コンサルタント選定と不適切対策
設計コンサルタントの選定は大規模修繕工事の成否を決める最も重要な作業の一つである。従って安価な見積金額に惑わされず、多面的に検討する事が肝要である。 以下に設計コンサルタント選定の注意事項を示す。これは我々が以前に編纂した『コンサルタント選定マニュアル』の内容を一部修正再構成して作成した。絶対とは言えないが、不適切コンサルタントを排除し、最良のコンサルタントを選定する一助になるものと考えている。
■会社業態
独立した専業の一級建築士設計事務所で、管理会社や工事会社等とは一切利害関係などの無い事が最低条件となる。マンションの維持保全関係を主要業務とし、代表者は一級建築士の管理建築士である事。
マンションの維持保全に関わる建築設計事務所の多くは個人や小規模である場合が多く、業務そのものは担当者個人の力量による部分が大きい。従って資本金や従業員数などの規模には拘らない方が良い。一般的に言われる売上高や利益率など財政面での評価は投資する側の評価で、業務依頼する側としての評価と一致するとは限らず、むしろ逆な場合もある。
■業務実績
マンションの大規模修繕工事の実績が多く、特に工事予定のマンションと経年数・規模・仕様などの条件が近い物件の実績が多い方が望ましい。
業務実績にリピーターが多い場合は、これまでの業務における管理組合からの信頼の証と言える。さらに改善改良や耐震・長期修繕計画策定など関係する多岐にわたる多くの実績が幅の広い経験豊かなコンサルタントである事を伺わせる。
■営業活動
建築設計事務所は依頼されて行う職業柄、あまり派手な営業活動は好まれない。
通常、見積の際には現地を視察するが、ヒアリング時にはかなり詳しい調査診断報告書を提出するコンサルもある。業務受注の前に調査診断や設計業務に踏み込むような資料作成などの派手な営業活動は管理組合への発注圧力を意図しており、管理組合としては要警戒である。
このような報告書に限って、ハードカバーでぶ厚く図・写真などカラーで、見た目は非常に立派であるが、専門家からすると一般論ばかりで中身は貧弱である事が多い。
■業務委託費見積
コンサルにより多少の違いはあるが、一般的には弁護士などと同様の業務報酬として、国土交通省告示に準じて算出している。それによると、業務報酬額=直接人件費+経費(直接・間接経費+技術料+特別経費+税)となる。直接人件費は、業務項目毎に必要な人工数(人・日)×技術者レベル毎の単価により算出される。詳細は「建築士の業務報酬基準」で調べていただきたいが、注意すべきは経費率が一般の物品販売業などとは異なり、割合が高い。(国交省告示の略算法では、新築の場合ではあるが直接人件費の2.1倍)
通常は実施する業務の内容を具体的に示した業務概要書が見積書と同時に添付されるのが一般的である。この中で必要な内容が漏れていないか、不要な項目が含まれていないかを精査確認する必要がある。
■業務担当者
管理組合との打合せを含めて実際に業務を行う担当者は資格のある社員である事。経験・実績が豊富で、居住者との接触の多い仕事柄、個人的人柄の良さも重要である。前記の業務実績に関しても、会社全体とは別に担当者個人としての実績を見る事が肝要となる。
これらを確認するためにはヒアリングには予定する担当者本人の出席が必須で、特に実業務に関する事については幹部や営業職ではなく業務担当者自身がきちんと説明して応答できる事が重要である。
■その他の注意事項
前回指摘のコンサルタントが持つべき基本的な心得の五点(公明正大・柔軟な対応・多面的サポート・長期的視野・正当な権利を守る)は、マンション管理組合の業務においては設計コンサルタントの最低限守られるべき要件である。
コンサルタント選定方法における有効な決定打を見つけることは難しいが、これらを参考にして、優秀でクリーンなコンサルタントを選定したいものである。 (つづく)

